2013年6月1日
軽井沢サクラソウ会議でカヤツリグサ科の植物観察会を行いましたのでレポートします。
講師としてお招きしたのは群馬県立自然史博物館・主任学芸員の大森威宏先生。
一昨年、博物館内の植物標本庫を見学させていただいたことがご縁で、今回の観察会が実現しました。
ご専門はカヤツリグサ科の植物だそうですが、カヤツリグサ科に限らず、植物全般に大変深いご見識をお持ちの先生。丁寧で分かり易い解説をしていただけるので、参加者は楽しみにこの日をむかえました。
【参考記事】2011年12月2日 標本庫見学会報告(群馬県立自然史博物館)
参加者は軽井沢サクラソウ会議のメンバー6名。主に植物標本プロジェクトに参加していて、カヤツリグサ科のように植物同定の難しい科の植物観察に興味津々の仲間。
植物標本作りも兼ねて、見学会のスタートです!
観察会を行ったのは軽井沢の東側エリア。先生は研究のため軽井沢にもしばしば訪れるようで、地形の特徴や植物の知識も豊富。先陣を切ってご案内いただきました。
林道を歩き始めると、次々にカヤツリグサ科の植物に出会います。
特徴や見分け方のポイントなど丁寧に解説していただきながら、同時に植物標本用として個体を採取していきました。
イトスゲ、ビロードスゲ、シロイトスゲ、カワラスゲ、あっという間に4種類。そして5種類目のカヤツリグサ科はオタルスゲ
和名は北海道の小樽に由来するものだそうですが、本州、四国、九州にも自生。
先生以外にとっては、「…」。スミレ科やユリ科の植物などと違ってピンときません。似たものがたくさんありそうです。
同定のポイントとして教えていただいたのは茎の付け根の部分
もう少しアップにすると
赤味がかった根元部分には魚の骨のような白い横筋。これがオタルスゲの特徴なんだそうです。 「ほ~ なるほど!」
そして6種類目タガネソウ、7種類目ヒゴクサと続き、8番目と9番目は一緒に観察です。
先生はアオスゲとイトアオスゲの2つが近くにあることをすでにご存じで、2つの個体がそろったところで、解説を始めてくれました。
大きさの違いだけでなく、細かな違いがあるようです。ちなみにイトアオスゲが上の写真でいう左の小さな個体。和名にイト(糸)がついているのは、「小さな」という意味合いのようです。
10種類目はヒカゲスゲ
生えていたのはコンクリートのよう壁の隙間で、どちらかというとヒナタ(日なた)。和名の印象とは異なる植物でした。
次に、11種類目アズマスゲを見て、12種類目のテキリスゲ
先生から十分に注意を受けたことは、和名の通り「手切りすげ」であること。葉のエッジが鋭く、素手で引き抜こうものなら、簡単に手を切ってしまう要注意植物なんだそうです。
刃物のような鋭い葉っぱを持つうえ、根が深く、標本として採取する際にだいぶ手こずりました。結局、根っこは完全な形では採取出来ず、途中で切断せざるを得ませんでした。
13番目に観察したのは「ど根性スゲ!」ならぬニイタカスゲ
とても小さなカヤツリグサ科植物ですが、生命力は強く、アスファルト道路の隙間にでもたくましく生長していました。串焼き用の金串で標本採取(上写真)です。
そして14種類目タマツリスゲ、15種類目オオカワズスゲ、16種類目カサスゲと続いて、観察会終了!
わずか3時間で16種類ものカヤツリグサ科植物を観察&標本採取。大変充実した観察会となりました。知らないことだらけだっただけに、実際の植物に触れながらの観察は得るものが多く、メンバー一同大満足でした。
大森先生、ありがとうございました。
【番外編1】クジュウツリスゲ
群馬県側のエリアで希少なカヤツリグサも見せていただいました。
昔、軽井沢で発見されたのでカルイザワツリスゲと名がついたものの、他の地域ですでに確認されていたものであったり、新たに他の地域で確認されたりして、現在ではクジュウツリスゲと呼ばれています。いずれにしろ個体数が少なく、大切にしたい植物の一つです。
【番外編2】エゾハリスゲ
事前にメンバーの集めていた植物標本の中に全国レベルで希少なカヤツリグサ科植物がありました。観察会終了後、大森先生に同定をお願いした時に分かりました。
エゾハリスゲといって、今まで軽井沢では確認されていなかった種で、全国規模で見ても希少なものなんだそうです。絶滅危惧TB類(EN)