2012年05月28日

環境保全研究所の自然ふれあい講座が軽井沢で初めてひらかれました!

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「カミナリシギから軽井沢の自然を考える」の観察会  

 深夜2時。夜更かして起きていた事は何度もあるが、こんな時間に起床したのは生まれて初めてかもしれない。そそくさと着替えて、いざ、軽井沢の発地に出発。
 「カミナリシギから軽井沢の自然を考える」と観察会が開かれるのだが、なんと、深夜2時半の開始。正直言って、近所での開催していなければ、参加しなかった。

 将に、草木も眠る丑三つ時、鳥を見に来る物好きは、そうそういないだろうと、思っていたが、集合場所に到着すると、結構な人数が集まっているの に、ちょっと驚き。20人ぐらいは集まっていた。物好きは、自分以外にも結構いるもんだなと、嬉しいような、可笑しいような、何か、ちょっと変な気分。

 まずは、環境保全研究所の堀田さんと、NPOアースワームの石塚さんが、オオジシギという鳥につて簡単に解説してくれた。ちなみに、カミナリシギというのはオオジシギの別名。

  • 主な繁殖地は、日本。特に北海道の草原に多い。本州では、東北、中部地方の高原地帯に局所的に生息。
  • 長野県では、軽井沢、霧ヶ峰が主な生息地で、菅平、野辺山に少数固体が生息
  • 長野県のレッドデータブックでは、絶滅危惧種IB類。各生息地での減少や絶滅が心配されている。
  • 軽井沢町発地には、10ペアぐらいのつがいが生息
  • オオジシギは、日没後と日の出前に、盛んに鳴いてディスプレイフライトをする
  • 鳴きながら飛び回るのは、オスだけ。基本的に、一夫一妻だが、オスは、ディスプレイフライトをして、他のメスの気を引いて、あわよくば、浮気をしようとしている。

 解説を聴いた後に、発地の田園地帯を歩いて回る。正直言って、寒い。さすが軽井沢。五月下旬といえども、夜中は冷える。用意してもらったカイロを背中に貼って、いざオオジシギに会いに出席。

 夜闇の彼方から聞こえてきたのは、「ケロケロロー」という青蛙。石塚さんの解説によると、青蛙は畦などに穴を掘って鳴いているので、声が良く響く とのこと。鳴き声がコダマしているような響きがあったので、勝手に「コダマガエル」と名前をつけて呼んでいたが、その正体が「青蛙」(正確には、シュレー ゲルアオガエルという名称)だったと知ことができた。それ以外には、「ボー、ボー」というフクロウの声と、「ギョオ、ギョオ、グギョギョギョ」という行々 士こと、オオヨシキリの声。

 石塚さん曰く、かつて、発地が、まだ水田地帯が多かった頃は、ヒクイナという鳥がたくさんいたらしいが、殆どが休耕田か畑になってしまった今は、 いなくなってしまったとの事。2005年に、声を聞いたのが最後。ヒクイナは、文字通り、顔や目、腹や足が緋色のクイナ。ちなみに、ヒクイナも絶滅危惧種 U類。水田から休耕田になり、ヒクイナが減って、オオジシギが増えたとのこと。生物多様性という観点からすると、寂しい限りだと感じた。田んぼもあり、畑 もあり、休耕田もありという、多様性に富んだ環境が、生き物たちには理想的だが、それを維持するには、安定して継続できる農業政策も必要だと強く感じた。

 軽井沢の草原について解説。軽井沢には、主に4種類の草原がある。

  • 浅間山の火山活動により形成された草原
  • 古い時代に湖だった草原
  • 馬のための草刈場
  • 休耕田

 観察ポイントを移動して、再度、暗闇に耳を澄ます。新しく聞こえてきたは「ヒーチュー」というノビタキの声。「ピッピッピッ」というコヨシキリの 声。オオヨシキリのやかましい声は、飽きるくらい聞いていたが、コヨシキリの声を聞いたのは初めてだった。いや、多分、聞いていたかもしれないが、オオヨ シキリの大音声にまぎれて聞き取れなかったのだろう。堀田さんの解説によると、コヨシキリは、初期遷移の葦原に多く、火入れをしている草原に多いとの事。 実際に、霧ヶ峰では、火入れのしている場所にしか生息していないそうだ。

「ズビィャー、ズビィャー、フフォロロロロー」という鳴き声と羽音が聞こえてきた。待望のオオジシギだ。顔を上げて、耳を澄ませば、前後左右の上空から、聞こえてくる。しかし、音は聞こえてきても、姿は闇にまぎれて見えない。

 鳥の声を聞いた。オオジシギの大合唱に合わせて、「ピー、ピー、ピー」というホオアカの鳴き声も聞こえていた。発地で農業をしている柳沢さんの話 によると、発地にオオジシギが姿を見せ始めたのは、減反政策が始まって、原野っぽくなってから。去年から減反奨励金がなくなり、草刈りや火入れなどの管理 ができなくなり放置して、ススキが伸びてきた。5年放置すると、柳の木が生えてきて、あっという間に、林になってしまう。草地を維持するには、手間や費用 がかかるとの事。石塚さんの話では、このような状況が続いて、林野化すると、オオジシギの生息する丈の低い草地がなくなり、いなくなってしまう可能性があるとの事。

 空が白んで来る頃には、オオジシギの声は聞こえなくなり、残念ながら、その姿を見る事はできなかった。会えたような、会えなかったような、ちょっと中途半端なオオジシギとの夜のデートだった。

 朝焼けが始まる頃には、ヒバリが、「ピーヒヨ、ピーヒヨ」と囀って、空の主役の座を、オオジシギから奪っていて、葦原では、「ヒー、ヒー、チャッ チャッチャ」とセッカの鳴き声が聞こえた。石塚さんの話では、長野県では、セッカは非常に珍しいとの事。ちなみに、セッカは小さくて良く見えなかったが、 囀りは、しっかりと聞く事ができた。セッカも、初めて聞く鳴き声だった。

 環境保全研究所の須賀さんの話によると、100年前の日本の草地の割合は13%ぐらいはあったが、今は1%まで減っている。その主な原因は、化石燃料への依存を強めた人間が、牛馬や有機肥料から離れて、里山的な草地が減ったためとの事。

 最後は駐車場に戻る途中で、「カッコー、カッコー」と、カッコウの今年の初鳴きを聞くことができた。その声を聞いて、ようやく、軽井沢にも初夏が訪れたなと感じたのもつかの間、朝霧で冷えた体を、車の暖房で温めつつ家路についた。(渡辺)

 

 

posted by 事務局 at 17:37| なんでも日記